この歴史と伝統のある建築物を、現在の生活様式にあった形に住みやすく再生して、なん
とか後世に残そうと、民家再生工事を計画しています。平成2年から徐々に老朽化した部分を 手直ししてきましたが、いわば「古家の造作」であり、目先だけをみた場当たり的な改造でし た。現在、設計・施工をいていただける業者を選定中であり、文化庁の文化財登録制度による 支援措置も検討中です。私共は建築の知識に乏しいため、専門の方のアドバイスを頂けたら と思います。お気軽にご連絡ください。
民宿マル七 民家再生工事に当たって
●基本コンセプト 1.親・子・孫の3代5人家族が、明るく仲良く快適に生活できる家にする。 2.バリアフリーを基本に考える。(床の段差を無くす。出入口や掃出し窓の戸溝も凹凸のないも のを選択する。階段には手すりを設ける。浴室の手摺 掃除のしやすさ等。) 3.民家の風格を保ちつつ、現代の生活様式に合った配置や設備を導入する。 4.南からの採光が少なく、また囲炉裏の煙が家中に廻って室内を暗くしているため、煤けた木 材を洗い、採光を考え明るい雰囲気にする。 5.しばらくは民宿を続けていく事を前提とする。所要人員は20名とする。その後もお盆や正 月、ゴールデンウィークは親戚の家族が集まるため、15名程度が宿泊可能とする。
●基礎
1.不同沈下により建具の建てつけが悪く、柱と壁の間に隙間があったりするため、基礎の不同 沈下を修正する。 2.東山の伏流水が湧き出す湿地であるため、水抜き工事をきちんと行う。 3.雪解け水や、降雨の際の水はけが悪いため考慮する。 4.家の廻りを除雪するようになり、基礎の凍みあがりによる犬走りのコンクリートの破壊等がみ られるため、凍結深度より下げた基礎工事を実施したい。その際、布基礎を表に出さず、戸谷 石を出す。 5.銅板葺きの屋根から落下する雪溜りの対策として、軒下部の融雪工事をしたい。ボイラーの 排気を有効利用できないか?
●大工工事
1.なるべく古い木材をそのまま使う事を原則とする。 2.壁はラスボード下地の漆喰仕上げまたは石膏プラスター仕上げを基本とする。 3.壁と木部の隙間があかないようにサネを設ける。 4.寒さや結露に対する対策に考慮し、壁・押入れまわりおよび天井の断熱工事は充分に行う。 5.1階の天井が2階床現しとなっているため、2階の床は根太用防音下地材を使用し、防音加 工を充分に行う。 6.2階の東西の部屋の天井が1850mmと低いため、出来る限り高くする。 7.2階の廊下の左右には明かり取りの窓を設ける。ドアも明かり取り付きのものにする。 8.押入れ上部には天袋を設ける。
9.外壁の貫き(化粧梁)は平成11年の改造で上からラスモルタルで隠してしまったが、外観に
力強さがなくなってしまったため、元通りに戻す。
●部屋の構成
1.玄関近くに老人室を設け、トイレと浴室を隣接させる。 2.2階は主に若夫婦と子供のスペースとする。 3.キッチン・リビング・ダイニングを1室とし、対面式カウンターを設ける。 4.台所はシステムキッチンを導入し、中央に調理台を設ける。キッチンおよび食器の収納スペ ースを広く取り、使い勝手を第1に考える。 5.囲炉裏は現在の位置とするが、ゆくゆくは現状のものをそのまま中の間に移設し、置き火の みとするよう中の間の床下を加工しておく。 6.前座敷・奥座敷の空間は、人寄せや来客を考えてそのまま残す。 7.収納場所が少ないため、使い勝手のよい収納スペースを出来る限り確保する。 8.冬の降雪期を考え、道の近くに車2台収納可能なビルトインガレージを設ける。 9.2階に簡単な洗面と、シャワー室を設ける。
●建具
1.出きる限り現行品を手直しして流用する。 2.外回りは、2重サッシまたは2重ガラスとする。 3.新規のふすまは、漢文の屏風を表具して使用する。 4.縁側の表側の戸締まりは1枚ガラスの引き戸とする。 5.窓にはすべて網戸を設ける。 6.2階の明かり取りのない戸板の雨戸は、硝子戸にする。
●土間・玄関
1.四半敷きの黒平瓦タイル張りとする。 2.上り框は現行品を流用する。 3.外の玄関から犬走りに続く箇所はコンクリートモルタル仕上げとする。 4.下駄箱は大きく、広く設ける。下駄箱上部を老人室とのカウンターとする。 5.表玄関は玉砂利を敷く。
●水廻り
1.近代的な充分なものを整え、古い民家の落ち着きと新しい機能の調和を図る。 2.水道管・配水管には凍結防止処理を行う。 3.トイレは水洗式とし、サイフォンジェット+ウォシュレットの便器とする。 4.浴室は凹凸を極力無くし、掃除をしやすくする。
●屋根
1.茅葺き屋根は維持管理が大変で、近年は暖房の影響でスガモリに似た現象が発生している ため、茅葺き屋根の形と厚みをそのまま残して、茅を落としてフカし、銅板四ツ切り一文字葺き とする。 2.大屋根の船笊舶ェは現行の形を維持する。 3.下屋根は大屋根からの雪や氷柱の落下を考えて強度を上げる。現行品流用ならばOK。
●設備機器
1.浴室も含めて、イニシャルコスト・ランニングコストを考えた床暖房とする。ボイラー廃熱の有 効利用も考える。 2.浴室は暖房設備を入れ、天井にパイプを設けて、厳冬期に洗濯物が干せるようにする。 3.照明も民家の伝統美に見合ったものを吟味する。装飾個所にはダウンライトや間接照明を 有効に利用する。
●家の外廻り
1.北側の石垣は積み直す。 2.東側を流れる川は、池以降を暗橋とし、南の補場整備の水路までもっていく。 3.西側の地面が西方向に、南側の地面が南方向に傾いているため、レベルを合わせて排水 工事を行う。 4.南側に幅員4m程度の道路をつくり、補場整備の農道と接続する。 5.西側のコンクリート垣が南端で途切れているが、外便所部分まで延長する。 6.土蔵から家の前まで車が通行可能にする。 7.使用頻度が減った薪小屋と細木小屋は撤去し、車庫を更新して、車庫兼作業場に機能を集 約する。 8.車庫の前まで洗車用に水道を引く。 9.土蔵および新規の車庫兼作業場には照明を入れる。
10.イチイの垣根はすべて抜き去り、背の低い樹木とする。
●再生後の平面図案
1.下記に再生後の配置図と平面図の案を示す。 2.作図に当たっては、外観を出来る限り変えない事と、柱(特に通し柱)の位置の移動・削除を 最低限にする事を意識した。 3.素人の図面であるため、上下階の取り合いや、耐力壁の構成等はあまり考慮していないが、 一例として参考とされたい。
民家再生に関するページ
www.minka.gr.jp/ 日本民家再生リサイクル協会 www.geocities.co.jp/NatureLand/2081/ 降幡塾/古民家再生・研究フォーラム www.aie.ne.jp/furihata/ 民家の再生 降幡設計ホームページ http://www.anno-spero.org/renaissance/otari 信州おたり民家応援団 www.valley.ne.jp/~o-ito/大糸木材-民家再生
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