とくダネ「忘れられた日本」

放映日 平成18年1月23日 ロケ日 平成17年12月30日〜2日、1月18日
フジテレビ とくダネ! とくダネ特捜部恒例企画「忘れたれた日本」 今年のテーマは「火」
リポーターは 熊谷 麻衣子さん(岩手めんこいテレビアナウンサー出身)

 とくダネ!特捜部 「忘れられた日本」というコーナーで約20分間、我家の正月風景が放映さ
れました。「忘れられた日本」は日本全国津々浦々の美しい風景、人の暮らしなどを取材し、多く
の現代人が忘れている大切なことを改めて思い出すことが出来ればという企画で、2006年の
冬は「火」をテーマに全国5箇所を巡りその初日に囲炉裏のある民宿マル七が紹介されました。

 小倉智昭さん、笠井信輔さん、佐々木恭子さん、ピーコさん、前田忠明さん、桜美林大学大学
院教授・諸星裕さんがスタジオに造られた囲炉裏セットからコメントをしてくれました。スタジオ
の囲炉裏では、我家から持っていったお餅を焼きながら、我家の在り方について話が弾んでい
ました。
 取材は延べ4日間に渡り行われ、放映された時間の何十倍ものロケが行われました。改め
て報道に携わる方々のご苦労が良くわかりました。娘と外孫のコメントが放映されなかったの
と、孫の帆南の名前が幌南と紹介されたのが残念でしたが、我家の暖かさが伝わる充実した
内容であったと思います。取材に来られた方々には心よりお礼申し上げます。
  孫の名前はその後のCSのOAでは修正されていました。



1月1日の撮影風景 左から3番目がリポーターの熊谷さんです



NA:あなたは新しい年をどんな思いで迎えましたか?ぴゅーぴ
ゅーと吹く風が一段と冷たく感じられるこの季節。さあ、一緒に
出かけましょう。今の私たちが忘れてしまった、懐かしく温かい
日本の風景を探す旅へ。
小倉:さあお待たせしました。「いまどきごはん」です。(笑) 忘れ
られた日本というのは夏やってたんじゃなかったでしたっけ。
熊谷:はい。今年から冬もやるんですけれどもね。はい、こちら
をご覧下さい。忘れられた日本2006年冬のテーマは「日本人
と火」です。という訳でこのような(囲炉裏の)セットを作ってみま
した。
佐々木:暖まりますね。囲炉裏って。
諸星:本当に火を熾(おこ)しているんですね。
熊谷:1回目の今日はこちらです。いろいろある中で、囲炉裏
のお話しをしたいと思います。私たちが訪れたのはこちら長野
県の白馬村。今回はこの白馬村で200年間使われ続けてい
る囲炉裏を求めて旅をしてきました。






NA:3000m級の山々が連なる北アルプスの麓。長野県白馬村の内山地区。この人口わずか58人の小さな集落にその家はありました。
熊谷:あっ。あったあった。2階建ての茅葺き屋根の大きな家。あれですね。
NA:今なお茅葺き屋根を残す「民宿マル七」大正9年に建てられた総2階造りの大きな家です。
熊谷:こんにちは。フジテレビの熊谷です。
私:あーどーも。お待ちしていました。ようこそ。どうぞ。
熊谷:玄関を入ってすぐのところに囲炉裏があるんですね。
NA:マル七のお客さんを迎えてくれるのは、囲炉裏と伊藤さん夫妻。夫の馨さんは御年79歳。妻の郁さんは75歳。夫婦で同じ名前の村でも名物夫婦です。そしてこの囲炉裏は、もう200年以上に亘り使われてきたものだと言います。
私:囲炉裏の掟(おきては)は、隅には神様がいる。それからこの鉄瓶の口は絶対に北に向けてはいけない。北と西は忌み嫌うといってね。それから囲炉裏の薪は昔から細い方から燃やすように言われてきましたね。
家内:私がまだ実家にいた頃も近所の人が集まっては、囲炉裏のまわりに藁を持ってきて、みんなで話をしながら父親といっしょに草履作りなんかをしていたのを思い出しますね。
NA:囲炉裏の煙は吹き抜けの天井を抜けて、茅葺きの屋根へと吸い込まれていきます。この煙が茅を燻(いぶ)し、屋根を丈夫にするという昔からの日本人の知恵。以前は村の多くの家で囲炉裏を使っていましたが、いまでは生活に囲炉裏を使っているのはマル七だけになってしまったと言います。昔は夏に学生が勉強をしに来たマル七ですが、予備校が増えたこともあり、年々学生は減っていきました。冬のスキー客を相手にするようにしたものの、今の若者に民宿の人気は芳しくありません。夫婦二人で過ごす日も多いのです。そんなある日の事。









熊谷:あれー。こんなに広い土間が靴でいっぱいですね。
NA:マル七が賑わいをみせていました。それは大晦日。一年で一番お客さんが多い日です。この日全国から集まったお客さんは30人以上。みんな常連さんたちです。
Sさん:27年前から来ています。
Hさん:20年目です。
Oさん:15年くらいです。
Hさん:おじちゃんは耳が遠くなったって言っているのに、若い女の子から電話がかかってくると必ず電話に出るんですよね。
熊谷:えー。そーなんですかー。
NA:ここに集まったお客さんは、毎年この宿で囲炉裏を囲み、年を越すのです。その中心にはいつもおじいちゃんがいます。
私:最近の若い人達には、靴の踵(かかと)をつぶしてスリッパのように履く人がいますよね。うちではね、見つけたら叱りますよ。うちのおじいさんが私の子供の頃から絶対にやってはいけないことだと言っていました。
お客さん:また始まった。(笑)
NA:毎年聞かされるおじいちゃんのお説教も、楽しみのひとつです。
NA:一方妻の郁さんは、台所で立ちっぱなし。囲炉裏にあたる暇はありません。おじいちゃんがお客さんをもてなし、おばあちゃんはご飯の支度。もう何十年もそうしてきました。
家内:本当に二人で一人前ですね。大正生まれ(おじいちゃん)ってあんなもんですよ。
NA:マル七の食事はすべておばあちゃん自慢の手料理。でもここマル七では、お客さんが進んで手伝ってくれます。そしてみんなで一緒に食べるマル七の夕食。
お客さん:おいしそう。いただきまーす。かんぱーい。お疲れさまー。
家内:こんなおばあさんが作ったものでも嫌わないで食べてくれる間は民宿を続けようと思うのですけどね。あと何年続くでしょうかね。そうは言っても明日のことも分からないですよ。
NA:食後の片付けもお客さんの仕事です。もんくを言う者はいません。そして食事の後、部屋にもどろうとするお客さんも居ないのです。
私:宿泊者全員従業員!働かざるものは食うべからず!(笑) が我がマル七の方針です。
熊谷:そうか。手伝わないと、ご飯食べられないんだ。
NA:普通のホテルや旅館では考えられないやりとりも、マル七ならではです。




(息子夫婦と孫が帰ってきて、玄関を入ってくると。)
私:おー。おかえりー。
家内:おかえりなさーい。おー。おー。お帰り。
NA:やって来たのは長男の学さん一家。
家内:帆南ちゃん、また大きくなったね。よく帰ってきたね。おばあちゃんが荷物を持ってあげるよ。
私:ピアノのコンクールで準優勝したんだってね。おめでとう。
帆南:優勝だと名古屋の大会に行けたんだけどね。
家内:ふーん。すごいねー。
NA:かわいい孫に会えるのは、二人にとって一番の楽しみです。お客さんも学さんの事は子供の頃から知っています。
Yさん:うまく言葉で言えないけど、やっぱり気がつくと囲炉裏のまわりに居ちゃうんですよね。おじちゃんとおばちゃんの人柄もそうだし、集まってくる人達も全然気兼ねしないし。
Kさん:話が途切れても火があれば場がもっちゃうじゃないですか。
NA:家族が揃い、いよいよ恒例の年越しカウントダウンが始まります。
お客さん:ごー。よん。さん。にー。いち。わーい。おめでとーございます。かんぱーい。おめでとう。パチパチパチ。
NA:でもその場におじいちゃんの姿はありませんでした。
CM:ここまでの放送はごらんのスポンサーの提供でお送りしました。



NA:長野県白馬村に建つ囲炉裏のある民宿「マル七」年に一度大勢のお客さんが集まる大晦日を迎えていました。そして新年のカウントダウン。
お客さん:ごー。よん。さん。にー。いち。わーい。おめでとーございます。かんぱーい。おめでとう。パチパチパチ。
NA:いつも台所仕事で忙しいおばあちゃんも囲炉裏も周りに出てきました。しかしおじいちゃんの姿はありません。
お客さん:あけましておめでとうございます。
家内:おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
熊谷:おばあちゃん。おじいちゃんはいないの。
家内:おじいちゃんは、ゆっくりお休みになっています。でもあのおじいちゃん幸せな人だよね。大勢お客さんが来てくれて、何もしないで話をしているだけで、お客さんがみんなやってくれるから。幸せな人だと思う。
NA:主(あるじ)抜きで盛り上がる囲炉裏。毎年変わらぬマル七の大晦日が過ぎていきました。













NA:迎えた元日の朝、火の消えた囲炉裏の前に最初に現れたのはおじいちゃんでした。今年最初の囲炉裏の火入れです。
私:ストーブやヒーターも温かいけれども、年寄りはじかにこうやって(囲炉裏の)火を見ないと堪能しませんね。
私:この石は先祖代々伝わる囲炉裏の守り神です。
NA:そこでおじいちゃんが囲炉裏の片隅に置かれていたまるい石を見せてくれました。
私:まるいでしょ。
熊谷:ほんとだ。まんまる。すごーい。
私:昔はね、この囲炉裏で味噌汁も作り、おかずも火にかけてね。でもひとつの村に大抵ひとりか二人は囲炉裏に落ちて火傷をした子供がいたんですよ。その身代わりにこの石が転げ落ちて焼けるということで、囲炉裏の隅に置かれているのですよ。
熊谷:あー。だからまるいんだ。
私:そう。囲炉裏の守り神っていう事ですよね。
NA:小さな神様は人々の生活に囲炉裏が欠かせなかった頃の名残(なごり)です。
お客さんの子供たち:あけましておめでとうございます。
私:はい。あけましておめでとうございます。
NA:民宿マル七のお正月。元日の朝はおばあちゃん特性のお雑煮を頂きます。
家内:同じ火でもストーブの火と囲炉裏の火では全然違いますよね。お餅だって、今便利だからレンジにかけてもいいし、オーブントースターで焼いてもいいんだけど、やっぱりこんがり囲炉裏で焼いたお餅の方が、みんな喜ぶしおいしいと思いますね。
私:まあ私の一生のうちは絶対に囲炉裏の火を消しはしないし、守り続けていきたいと思います。
NA:その頃、外には母屋の茅葺き屋根についた氷柱(つらら)を、丁寧に落としているお客さんがいました。マル七の夫婦は高齢で屋根の雪降ろしが出来ません。長男の学さんがお客さんと一緒に汗を流します。
NA:そしてマル七のお正月を締め括るのが記念撮影。毎年おじいちゃんがシャッターを切ります。
私:はい。写ったー。
NA:これを合図にお客さんが帰り始めます。おばあちゃんのお土産を手にして、ひとり、またひとりと、お客さんたちが帰っていきます。
嫁:気をつけてねー!またねー!
NA:おじいちゃんは、お客さんの姿が見えなくなるまで見送ります。
NA:忙しい正月が過ぎ、また静かな毎日が戻ってきました。「マル七」そこは、囲炉裏のぬくもりと、温かい人々が迎えてくれる民宿です。



















スタジオより
小倉:まあ、あれだけ立派な囲炉裏があるお宅っていうのは裕福な家庭だと思いますよ。地方でも。
佐々木:すごい立派でしたね。
小倉:私の実家は秋田ですごい田舎でしたけど、囲炉裏なんか無かったですよ。火鉢だけ。前田さんの家は北海道ですけど、囲炉裏はありましたか。
前田:ありません。ありません。まず、土間っていうのが無かったですね。ですから「マル七」は相当すごいですよ。
熊谷:薪を使った囲炉裏というのは白馬村で「マル七」だけだそうです。炭(置き火)を使ったところはまだあるそうですけれど。非常にめずらしいですよね。囲炉裏に守り神っていうのが居るのは知りませんでした。四隅に神様がいるから、またいではいけないとかいう掟があって、端っこにいっこ丸い石があって、それが子供達が火傷をしたりするのを守ってくれるという事なんですね。
小倉:囲炉裏には座る場所とかもちゃんと決まっていて、家長がこことか、あるんでしょう?
熊谷:そうですね。ちゃんと鉄瓶の向きも北と西はいけないということで、今回は東に向いていましたけどね。やっぱり皆さんがおっしゃっていたのは、暖房器具はストーブとかコタツとかありますけど、本当の火を見ないと暖かいっていう感じがしないっておっしゃっていたのと、夏だと人の近くに寄りたくないですけど、冬だと寄りたくなりますよね。で、この囲炉裏のまわりに集まってくるっていうのがいいみたいですね。
ぴーこ:私は家が横浜だったので囲炉裏のある家に住んでいないんですよね。こういう火鉢はありましたけど。
小倉:東京でも囲炉裏のあるお宅っていうのはあったんじゃないですか。ちょっと郊外にいったりすると。昔はあったと思いますけどね。
前田:埼玉はありましたよ。昔は。
佐々木:本当にヒーターで部屋中暖めてもみんな集まって来ないですよね。一箇所囲炉裏だけが暖をとる場所だからみんな集まってくるんでしょうね。
熊谷:そうですね。炭とか薪を、様子を見ていじってみたりすると、本当に飽きないですね。
小倉:まあごくごく普通の一般的な家庭っていうのは、ちっちゃな土間があって、そこにかまどがあったくらいでね。こういうお宅って言うのは、馬屋があって、広い土間があって、流しがあって、それでああいうふうに大きな囲炉裏がまんなかにどーんとしつらえているんですよね。
前田:曲がり家みたいなやつですよね。
小倉:そうそうそう。
前田:そうすると馬も同じ屋根の下に居るんですよね。
小倉:そういうお宅でないとああいう経験は出来ないって思うから。今、あれだけのものがあるから民宿になって残っているっていうのが、すごいですよね。
ぴーこ:囲炉裏って炭じゃ駄目なんですよね。やっぱり薪だから、あの薪をたくさん使うっていうのが、今でいうとお金がかかっちゃうんですよね。
小倉:ここのお宅も玄関先に薪が積んであったでしょう。あれ冬支度はみんな薪を割って、薪を積んどくわけですから、大変ですよね。
佐々木:いつから支度をするんですか。
熊谷:夏のうちから、お客さんたちが薪割りをしてくれるそうですよ。
ぴーこ:薪って乾いていないと火がつかないんですよね。
熊谷:煙が出やすかったりするんですよね。
熊谷:それでこのあとなんですけれども、この「マル七」なんですけれども、息子さんの学ぶさんがいずれは帰って来たいというふうに思っていて、囲炉裏のあるおうちも守って行きたいと思っているんですけれど、民宿を続けていくとなるとやっぱり色々と大変なことがあるようで、そんな事を悩んでいましたね。
小倉:今の若い人達は民宿とか、ペンションまでもが古いっていう感覚でしょう。で、ホテルに泊まるのが一番良いって言うイメージですから、それなりの施設が整っていないと駄目なんですよね。きちんとしたものが無いとね。そうすると民宿は苦しくなりますよね。本当は良いんだけどね。
熊谷:そうですよね。これだけくつろげるっていうのはなかなか無いですよね。
小倉:野沢菜食べながら、囲炉裏で一杯っていうのがいいんだけどね。(我が家のお餅をひっくりかえしながら)なかなか焼けないね。
ぴーこ:どうして年寄りってみんなすぐに食べたがるの。
熊谷:おいしそうに焼けてますもんね。




★下記に「とくダネ!」オフィシャルページのコメントを引用させていただきました。

とくダネ!特捜部 1月23日(月)
忘れられた日本@〜囲炉裏〜
特捜部恒例企画「忘れられた日本」今回のテーマは「火」
火と人々のふれあいを5日間にわたりお送りします。
一日目は「囲炉裏」に集う人々。
舞台は長野県白馬村。
日本アルプスの麓に人口六十人ほどの小さな集落。
その中に大正九年に建てられたという総二階造りの大きな茅葺屋根の民宿があります。
民宿を上がってすぐの御上(おえ)とよばれる居間のほぼ中心には、二百年以上にわたり代々
使われてきた囲炉裏が煌々と火を蓄えています。
毎年、囲炉裏を囲みにたくさんのお客さんがここを訪れます。
民宿を営んでいるのは八代目当主である伊藤馨(かおる)さん79歳、妻の郁(かおる)さん75
歳。
そろって同じ読みの名前という、村の名物夫婦です。
そんなひっそりとした村にある囲炉裏とそこに集う人々。
忘れられたものをのぞいてきました。

本編で紹介させて頂いた民宿
民宿名「マル七」
住所:長野県白馬村
ホームページURL:http.//homepage2.nifty.com/hakuba07/


テレビブログより 放映経過
08:00:00オープニング
09:21:29<とくダネ特捜部>忘れられた日本「火」・囲炉裏
09:21:46CM
09:23:46<とくダネ特捜部>忘れられた日本「火」・囲炉裏
北アルプスのふもと長野県白馬村の内山地区にある「民宿マル七」を取材。マル七八代目当
主・伊藤馨氏、妻・郁氏を紹介。伊藤馨氏が「囲炉裏のおきては四隅には神様がいる。」とコメ
ント。郁氏のコメント。1968年当時のマル七の写真紹介。孫・伊藤帆南ちゃんを紹介。お客さん
のコメント。
09:31:59テレビショッピング
09:33:29<とくダネ特捜部>忘れられた日本「火」・囲炉裏
北アルプスのふもと長野県白馬村の内山地区にある「民宿マル七」を取材。2005年12月31日
のマル七、2006年元日の囲炉裏の火入れの様子紹介。マル七八代目当主・伊藤馨氏のコメ
ント。丸い石について「昔は囲炉裏で汁物も煮ておかずも作った。だから1村に必ず1人や2人
いた、囲炉裏に落ちて怪我してやけどする子どもが。その身代わりにこの石が転げ落ちて焼け
る。それで囲炉裏の守り神という」とコメント。長男・学氏を紹介。小倉智昭、ピーコ、前田忠
明、桜美林大学大学院教授・諸星裕氏のコメント。
09:42:06気象情報
09:42:12CM
09:53:59エンディング



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忘れられた日本のワンシーン
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